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面接・採用で、採ってはいけない人 事例集<3>

面接・採用で、採ってはいけない人=即戦力期待の経験者

即戦力期待の営業マンを採用してみたが…

これまで、従来の得意先からの仕事だけで忙しかったA社。社員40名ほどの製造業です。ここのところその得意先からの仕事も減少し、新しい取引先を開拓することが急務になってきました。

営業といえば必要に応じて社長がおこなう程度、今まではそれで通ってきたのですが、今後は営業にも力を入れる必要があると、A社では新たに営業マンを募集することにしました。もちろん中途採用です。

とりあえずハローワークに求人を出すと、ポツリポツリではありますが申し込みがありました。さっそく1人、2人と面接をしましたが、どうも今ひとつピンときません。

そして3人目に面接したのがBさん。これまで社員数百人の製造業で営業をやっていたけれど、新しい部長との折り合いが少々悪く退社したという、40代の男性です。同じ製造業での営業経験も長く、Bさんによるとこれまで大きな営業成果を上げてきたようです。

「願っても無いいい人が応募してきてくれた。これならうちで活躍してくれるに違いない」と、面接の場で「ぜひうちにきてほしい」と告げました。ぐずぐずしていたら、他の会社にとられてしまいそうだったのです。
するとBさんは早速給料のことを話題にしてきました。

「基本給ですが、これまでと同じにしていただきたいんですが」
「これまでと同じって、いくらなんですか?」
「35万です」

実は、ハローワークへの求人書類では、基本給18万~32万と大きく幅を持たせて出してありました。最初から32万出すことはちょっと考えられませんでしたが、最高額があまり低いと応募が少なくなる気がしたのです。いい人に応募してもらうためには、給料の上限額を大きくしておかないと、そう考えたのです。

35万とはっきり言われて社長は言葉に詰まりました。するとBさん。

「たしか求人票の基本給は32万でしたよね。私は製造業での営業経験が長いですからその分を考えていただき、35万でお願いします」

基本給35万というと、A社の社員の中では工場長に次ぐ金額です。本来であれば、とても出せる額ではありません。けれどもここでその35万を断ったら、こんなによい営業マンはもう採れないかもしれません。

それに、営業だけに、仕事さえ取ってきてくれれば35万は安いものです。また年収で考えたら賞与で調整はきくはずと、社長はBさんに基本給35万を約束しました。 

面接した時の話と違いすぎる・・・

それから6カ月。Bさんの営業成果はまだ1つもあがってきません。もちろん最初からドンドン仕事が取れるわけではないでしょうが、それにしても「惜しかった」というところまでいった案件さえもまだありません。

社長はだんだん心配になりました。「ほんとうに、前の会社ではバリバリ成果をあげていたのだろうか」と。

そんなときたまたま社長が出入りの部品業者に聞いたのが、Bさんの前の会社での評判でした。それによると、やはり前社でもずっと営業成績がふるわず、部長が変わったタイミングで会社をやめさせられたというのです。面接のときにBさんに聞いた話では、大きな営業成果をあげていたはずだったのに。

「採ってはいけない人」を見極めるのは、ホントに難しいですね。

その話を聞いて以来、社長のBさんに対する評価ははっきりしたものになりました。社長自身が感じていたマイナス評価が裏づけされた形になったのです。

そうなると、Bさんに払っている35万という金額が、あまりに不釣合いに思えます。
そこで社長は、直接Bさんに話をしてみることにしました。

「給料だけれども、成果も出ていないし、少し考えさせてもらえないだろうか」

すると、給料を下げる相談をされたBさん、「最初からの約束ではないですか!」と、ひどい剣幕です。 

「採ってはいけない人」を見極めるのは、ホントに難しいですね。

Bさんが承知しないのに無理やり基本給を下げたらもめごとが起こりそうです。けれど、かといって社内で工場長に次ぐ金額の基本給を、成果がまったく出ていない、そしてこれからの成果も心配なBさんにこのまま払い続けるのも納得がいきません。いったいどうするのがよいのか・・・。

「採ってはいけない人」を見極めるのは、ホントに難しいですね。

A社のここがまずかった

①面接時に、Bさんの「いい話」をそのまま信じてしまった
応募者は自分のことを、多少誇張して話す、それは当然のことだと考えましょう。大切なのは、応募者の話に対して面接者が質問をしていくこと。質問により「ほんとうのところ」を明らかにすること。よい人を採りたいがために会社側も「この人はよい」と思い込んでしまう、これが採用の失敗の一番大きな原因です。

②その場で採用を決めてしまった
「いい人だ」と思っても、もう一度冷静になって考える時間を持ちましょう。またその間に、「つて」をたどって応募者の前職での評判を聞くことができれば大きな参考にできるでしょう。

③給料を応募者の言いなりで決めてしまった
想定以上に高い金額の要望があり、そうせざるを得ないときも、いきなり基本給を高くするのではなく、後で調整が効く形にしておきましょう。

 山口悦子
≪今後の対応のヒント≫
このケースでは、期間を設定して目標設定し、達成できないようであれば基本給も変更する、それをBさんと合意のうえでおこなっていくことになるでしょう。いきなり・むりやりの変更をしては、大きなもめごとになってしまいます。

「採ってはいけない人」を見極めるのは、ホントに難しいですね。